免許合宿を振り返る。

 

申し込み

合宿で免許を取った。折角なのでどんな生活だったか記録を残しておこう。あまり面白みのない記事だけど、まだ免許を取っていない人は参考に、もう免許を持っている人は教習所時代を思い出しながら読んでほしい。

ボクは何か月も教習所に通うのではなく、二週間で免許が取得できる合宿免許を選んだ。楽だもん。発達障害者が自分で予約管理しながら通うとかムリムリムリムリカタツムリ!

料金はほぼ30万円だった。ここには試験の受験料、寮費、交通費などが含まれる。教習所は香川県だが、そこまでの交通費は学校が支給してくれるとの事。京都からは新幹線を利用した旅費が支給されるが、高速バスを使えば教習料金が5000円引きになると言われ、そうした。この貧乏性があとで少し困ったことになる。

申し込みからしばらく経ち、詳しい予定表が送られてきた。

以下の交通ルートの往復料金が卒業時に学校より支給されます。

JR京都線快速)JR京都駅 5:43発 ⇒ 大阪駅 6:19着 

(高速バス:さぬきエクスプレス)阪急梅田 7:10発 ⇒ 丸亀駅 11:23着

集合時間 11:30 丸亀駅集合 スクールバスがお迎えに参ります。

集合時間に遅れると入校できない場合がございます。

 

・・・は? どうやったら朝5:43に京都駅を出られるんですかね(困惑)この時間、ボクの家の近くから京都駅に行く交通機関はまだ始発が出ていない。なのでサポートセンターに電話してみた。

「えーっとですね、あのー、お送りいただいた案内書の、えー交通手段という欄にですね、京都駅を5:43に出発すると書かれているんですけれども、あー、その時間に出発する手段というのが、えー無いわけでして。」

「11:30に丸亀駅よりスクールバスが出発いたしますので、それまでにご到着いただきたいという形になっております。」

「なるほど。つまり、えー例えば前日に大阪へ行っておいて、当日7:10発のバスに乗るだとか、そういった形でも問題なく交通費自体は支給されると、えー言う認識でよろしいんでしょうか。」

「それに伴う宿泊費などは補償できませんが、とにかく11:30に丸亀駅に到着するようお越しいただければ問題ございません。」

「ああ、その点は大丈夫です。わかりました、どうも、失礼します。」

はい。  はいじゃないが。

そういうわけで梅田駅に近いカプセルホテルを予約した。一泊2300円なので、新幹線じゃなく高速バスを選ぶことで値引きされた5000円から引いてもまあ2700円は浮いたことになる。モーマンタイ。

 

教習開始まで

ここまでが申し込み。続いて当日に移ろう。

入校前日、夕方に大阪へ向かい、カプセルイン大阪にチェックインした。ここは日本で最初に開業した歴史あるカプセルホテルで、なかなか歴史のある施設だ。設備は悪くなく、価格も安い。なにより梅田駅から徒歩10分程度の立地が良い。宿泊者は併設されているスパ・サウナが自由に使えるので、ゆったり羽を伸ばした。ちなみにホテルのすぐ隣にまんだらけがある。伊藤計劃についての本、渚カヲルについての本、そしてBL小説を一冊一目惚れして買った。なんでこのタイミングで荷物増やしてんだよお前。

伊藤計劃虐殺器官しか読んでいないが、購入した本に収録されていた未公開短編「海と孤島」は面白かった。六本木で発狂した男が自身の「王国」を構え、人々に無視されたまま猫の肉を喰いつつひたすらオナニーし続ける小説で、脱糞忍者テイストの色濃い名作だった。

 

さて、入校当日。遠足の前日のように緊張してよく眠れなかったボクは朝5時半ころ、アラームの前に目が覚め、パンをかじりながらカヲルくんについての知識を身に付け、バス停へ向かった。

初めて乗る高速バスは悪くなかった。シートは三列で、それぞれの間に人が通れるほどの間隔があいている。車両後部のトイレにいつでもアクセスできるのは頻尿のボクにとってありがたい。何より嬉しいのは巨大で重いキャリーバッグをトランクへしまえることで、この点では自分で荷物を管理する必要のある電車よりずっとありがたかった。大阪駅を出発したバスはなんば、三宮に立ち寄り客を拾うが乗客は少なく、40人程乗れるバスに乗ったのは10人以下だった。バスは5時間ほど走り、終点丸亀駅へ向かう。一つ問題が発生した。交通状況の影響で、バスの到着が少し遅れるらしい。「少し」が5分なのか10分なのか、はたまた30分近くなるのかわからないが、運転手に聞いてもおそらく意味がないだろう。予定ではバスが11:23に丸亀駅へ到着し、そこからスクールバスが11:30に発車するのだから7分しか猶予が無い。「集合時間に遅れると入校できない場合がございます。」などと脅されているので怖くなってきた。こういう時はとりあえず電話してみよう。

「あー、もしもし。えーとですね、本日入校予定のうおとかと申します。事前に頂いた案内書でですね、えー集合時間が11:30に丸亀駅とあるんですが、えー現在乗っているバスが少々遅れるかもしれないという事でして、そのー集合時間に間に合わない可能性があるんです。」

「それでしたら・・・12時ころに車の方向かわせますので、えー到着しましたら、その時間までお待ちください。ご連絡いただきましてありがとうございます。」

みんなも遅刻するときは連絡を入れようね!(啓蒙)

そんなこんなで11:40頃丸亀駅に着いた。ドトールでも無いかと思ったが何もない。商店街まで重い荷物を引きずるのも嫌だったので、駅でぼんやり待つ事にした。京都と違って既に春の暖かさで、たまらずコートを脱いでゆったり日光浴をした。

12時を5分程過ぎた頃、迎えのヴァンが来る。自動車学校までは10分程度かかった。学校に入り、荷物を置き、写真を撮り、書類にサインする。その後すぐ説明が行われている教室へ案内された。定刻通り到着していた生徒に混じり、説明の最後の部分のみ聞く。5分程度で説明会が終わり、場所を移して先生がボクのために残りの説明を繰り返してくれた。寮の入り口はカードキーを使ったオートロック式で、共用の流し台、電子レンジ、電気ポット、冷蔵庫がある。ロシア留学で集団生活に懲りたため少し割高な個室プランを選んだが、悪くない部屋で充分快適に過ごすことができた。部屋は一般的なビジネスホテルに近く、ベッド、机、テレビ、ユニットバスが備えられている。

 

教習開始:第一段階

荷物を広げて巣作りを終えたら、直ぐに学科教習が始まった。教室は一般的な小講義室と変わらない。1コマ50分の授業はまず20~30分の間講師が教科書の解説をし、後半は解説ビデオを見るスタイルだった。そうそう、毎時間教習前に「教習原簿」というものを教卓に提出する必要がある。

教習原簿は写真のついた書類で、視力、色盲検査の結果、生年月日や本籍などのプロフィールが1ページ目に書かれている。2ページ目以降は教習内容が書かれていて、教習が終わるごとに教官が押印する。学科は第一段階10時間、第二段階16時間、技能は第一段階15時間、第二段階19時間にわかれており、教習を進め判子を集めるとスタンプラリーのようで楽しい。また、原簿には「みきわめ」のチェック欄もある。みきわめについては後述する。

技能教習の最初の2時間はシミュレータを使った基本操作の練習になる。ゲームセンターに置かれたレースゲームの筐体に似ているが、ライトやワイパーの操作がある事、クラッチペダルがある事など、より実車に近い造りとなっている。MT教習者のほとんどはここで人生初のクラッチ操作に向き合う事となり、大抵エンスト(エンジンストール)を経験する。車体の振動などが再現されていない分、実車よりエンストしやすいと思う。MT免許取得者の中にはエンスト直前のあのガクガクした揺れがトラウマになっている人もいるらしい。

技能試験は3時限目から実車教習となる、が、最初に乗るのはAT車だ。ここで教習所内コースを走りつつ、ハンドル操作などを学ぶ。MT教習者が気楽に運転できるのはここまでだぞ。

うちの学校では、技能教習の場合開始時間3分前くらいまでにロビーに集まり、教官たちがわらわらと教員室から出ながら教習生の名前を呼ぶ。誰がその時間の担当になるか呼ばれるまでわからないため、割と緊張する時間だ。

4時限目からMT車での教習が始まる。アクセルペダルを離し、クラッチペダルを底まで踏み込み、ギアを変え、アクセルを少し踏んでエンジンの回転数を維持しつつ半クラ状態からゆっくりクラッチペダルを戻していく......。クラッチペダルをしっかり踏み込まなかったり、エンジンの回転数が充分でない内にクラッチペダルを上げると即座にエンジンが止まる。半クラ状態から急いでクラッチペダルを上げると変速ショックで車から投げ出されそうなほど揺れる。とてもハンドル操作どころではない。身体が覚えれば勝手に動いてくれるようになるので、今はひたすら慣れるまで繰り返そう。

屋根の上に「検定中」と書かれたプレートを乗せている教習車は、修了検定、もしくは卒業検定中の車だ。邪魔をすると死ぬまで恨まれる事になるので充分距離をとってあげよう。

10時限目くらいから無線教習も始まる。普通助手席に教官が座った状態で教習するが、無線教習では無線で指示を受けつつ一人で運転する事になる。正直めちゃくちゃ気楽。無線教習の場合教官1人に対して3人程度の教習生が同時に行うので、無線での指示が遅れる事がある。気にせずのんびり走ろう。一人で運転する開放感があるからと言って、無線が繋がってるから歌いながら運転したりすると丸聞こえで恥ずかしいぞ。

教習は14時限目までで、15時限目は「みきわめ」になる。これは一種のテストで、仮免試験(仮免の技能試験は修了検定と呼ばれる)前に必須のものだ。安全確認、一時停止、基本操作などのチェック項目が満たされているかを見極められる。ボクの場合この時の教官が嫌味な人で、何かできない事があると「他の教官の教習でちゃんと教えられて無かったのか?」と繰り返された。まあ見極めは合格。終わった後、翌日の修了検定のためにダメ出しされるアドバイスを頂く事ができる。また、修了検定の前に「効果測定」も受験する必要がある。これは学科版見極めとも言える仮免学科試験の模試のようなもので、合格して原簿に判子をもらわないと仮免試験は受験できない。最近はパソコンを使って試験を行う所が多いそうで、わりと気楽に受けられる。ボクは一度落ちた。この効果測定は何度でも受けられるので、あまり気張らずに取り組もう。相当の天才でなければ一度講義を聞いただけで全て記憶したりできないので、携帯アプリとかで空き時間に勉強しよう。ほぼ実際の問題と同じものが無料でトレーニングできる。

 

修了検定

修了検定は3つのコースが用意されていて、どれにあたるかは直前に指示される。このコースは暗記していなくても隣で教官が教えてくれるが、余裕を持って運転するためにはある程度覚えておいたほうが安心できるだろう。また、場内の各交差点には番号が割り振られていて、教官が「3番を左」「6番を直進」などと指示するため、当日パニックにならないためこれは覚えておいたほうが良い。検定コースには進路変更して回避すべき障害物(駐車車両)、信号のある交差点、見通しの悪い交差点、踏切、一時停止などがあり、その対応が採点される。またS字やクランクといった「狭路」も全てのコースに設定されている。多くの教習生を苦しめた脱輪スポットだが、車体感覚をつかむ慣れしか対処方法はない。どの線が窓やミラーのどこどこに見えた点でハンドルを回す、といった教え方をされるので、教えられた事は必ず書き取り、繰り返しイメトレしよう。車に乗る時は周囲の安全を確認して乗り込み⇒座席の位置を調節し⇒ミラーを調節し⇒シートベルトを締めるまでの手順も採点対象になる。一連の流れはイメトレを繰り返して身体に覚えこませよう。直線部分では指示速度35km/hまで加速する事になるが、距離が短いのでクラッチ操作がとても忙しい。速度未達は減点対象となる。あせらず...と言っても多分あせるので、あくまで冷静に操作しよう。

修了検定が終わるとロビーで待たされ、他の教習生が終わるまで待つ事になる。全て終われば教官が出てきて、合格者の番号を呼ぶ。「全員合格!」という事もあれば、「合格者はMT1、2、4、5。ATは全員合格」という事もある。こうなると落ちた人間は精神的ダメージ絶大だが、めげずに頑張ろう。

無事修了検定に合格すれば、そのまま続けて学科試験の教室に案内される。この仮免学科試験はかなり難易度が低いので、ひっかけ問題に気を付ければそう難しくない。しばしばネタにされるが、免許の学科試験は本当にひっかけ問題が多い。問題製作者は脳みその代わりに腐ったかぼちゃプリンでも詰まってるんだろうと思う。人間という種が持ちうる意地悪さの結晶ともいえる究極の悪問なので、覚悟した上で作問者の意地悪さを鼻で笑って解こう。

修了検定に合格すれば、そのまま仮免許証を受け取ることができる。仮免許証には写真、氏名、生年月日、住所、本籍、またメガネ着用等の条件があればそれも記載されている。合宿生など、スケジュールを詰めている場合、昼にこの仮免を受け取ったらその日の午後から路上を走る事になる。ここからが教習の第二段階だ。

第二段階

路上教習は教習所内より遥かに楽に走れる。常に数十メーター間隔でカーブがあるわけでもないし、道幅はずっと広いので50km/hくらい出しても場内とはスピード感が全く違う。操作は場内より楽だが、アクシデントの機会は多いので総合的な難しさで言えば変わらないかもしれない。高齢者の運転する車はとにかく危ないので、高齢者マークを見たら警戒度をMAXにする事。自転車も歩行者もとにかく高齢者は危ない。教官から「トコヤ」は事故の危険が高まるので気を付けるように言われた。つまり「年寄り」「高速走行」「夜間」からトコヤ。老人は危険察知能力が衰えるため、運転に限らず畑仕事中に熱中症で死んだり、台風の時に畑を見に行って死んだりする。ボクの故郷である長野県......もといロシアでは、毎年屋根の雪下ろし中に転落死する老人が冬の風物詩となっている。勝手にくたばってもらう分には構わないけれど、路上ではこっちが巻き込まれるので充分に注意しよう。この第二段階では、路上を走りつつ卒業検定の3つのコースを教えてもらう。車線変更をするポイント、駐車場所、カーブミラーの場所などは地図に書き込んでおこう。

第二段階では、路上教習の他に教習所内で方向転換と縦列駐車の教習もあり、卒業検定ではこの二つのうちどちらか片方のみが行われる。狭路の時と同じく、ここでも「どの線がどこどこに来たらハンドルを切る/戻す」といった指導を受けるので、必ず書き留めてイメトレで復習しよう。

第二段階には高速教習があり、高速道路を走る機会がある。通常3人程度が一つの車に乗って交代しつつ実施するが、ボクの場合他にMT車の教習生がいなかった、と言って教官とマンツーマンの教習になった。そのため高速教習はインターチェンジまでの下道路上教習を含めて通常3時間の連続で行うが、ボクは2時間で終わって一時間余分に通常の路上教習を受ける事が出来た。高速道路には横断歩道も交差点もないので、通常の路上教習よりはるかに易しい。高速走行時は少しハンドルを切っただけで大きく曲がるので、走行位置がズレないようにだけ注意しよう。

第二段階の教習を18時間終えれば、再びみきわめがある。学校によって違うかもしれないけれど、みきわめのチェック項目は教習原簿に書かれているので事前にどんな所が見られるのか確認しておこう。第一段階と同じように、卒検前に効果測定もパスしておく必要がある。

卒業検定

卒業検定は一つの車に2~3人の教習者が乗り、途中で交代して運転する事になる。検定コースは3つ用意されているが、検定前に集められて行う試験説明時にどれを走るか伝えられ、地図を渡される。この時、路上での試験を終えて場内へ戻って来た時バックでの方向転換と縦列駐車のどちらが行われるかも伝えられる。卒検でも「次の交差点を右に」といった指示があるのでコースを完全に暗記しておく必要は無いが、進路変更のタイミングなどは指示して貰えず、自分できちんとできているかが採点対象となるので覚えておく必要がある。

「その辺で停まってください」と指示され路肩に駐車するが、この時の駐車場所は「交差点とその端から5m以内」「横断歩道や自転車横断帯とその端から前後5m以内」「駐車場、車庫などの自動車用の出入り口から3m以内」などの学科で覚えた駐車禁止場所をきちんと守ろう。路上教習時に駐車ポイントは教えてもらえるけれど、もし卒検本番でその場所に他車が駐車していた場合などはこれらの条件に当たらない場所を自分で判断して駐車する必要がある。

正直な所、卒検で受かるか落ちるかは運次第な所が大きい。なんのイレギュラーも発生せず無事に終える人もいれば、歩行者が飛び出して来たり、駐車車両で進路が塞がれていたり、対向車が信号無視したりしてくる事もある。助手席の教官が補助ブレーキを踏めばその時点で失格、検定中止になる。なので祈ろう。止まれの標識見落としたり踏切で安全確認せず進行したりするのは論外だけれど、何か想定外の事態の後だとパニックになって気が回らない事もある。信号無視、踏切での安全確認違反、一時不停止などもその場で即時検定中止になります。

ボクの時はじいちゃんが車道の真ん中をふらふら自転車で走り続けてて、教官も苦笑いしてた。あとこれもまたじいちゃんが横断歩道のない場所で飛び出して来たりしたけど、この時は事前に極度警戒(しなさい)で減速していたので無事停まれた。

卒検の運転が終われば、ほかの教習生が試験を終えるまでまた待つ事になる。ボクは受験番号1番だったため、終了後1時間以上待つ事になった。全員の試験が終わればまた修了検定の時のように、合格者の番号が発表される。仮免と違い、本免の学科試験は居住地の免許センターで受験するため教習は全て終わり、そのまま卒業式となる。卒業式と言っても校歌を歌ったり卒業生代表が挨拶をするわけではなく、書類を受け取って説明を受けるだけの事が多い。うちの学校では校長が延々と自分語りを始めたので中高の卒業式を思い出した。ここで受け取った卒業証書が免許センターでの本免試験時に必要になる。卒検に落ちた場合、1時限以上の補習を受けた後に再受験する事となっている。補習料、試験料に加え、合宿生の場合延泊料金を払ったり、帰りのチケットを取り直したりする必要があるので卒検はかなり緊張した。

こうして2週間の免許合宿を終え、香川から帰ってきた。2週間で食べたうどんは約10食。うどんの相場はかけが中サイズ(2玉)330円程度。味は比肩するうどんが無いほどの素晴らしさでした。

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2019.3.8