ロシア語とラテン語を比較してみる文法の話

 

 

以前試験のために制作したWebページ

内容がなかなかお気に入りなのでここに投稿しようと思います。

 

 

 


文法小話

動詞の人称変化

ロシア語もラテン語も「誰が行うか?」を動詞を変化させる事で表します。ドイツ語などをされている方にもお馴染みかもしれませんね。 両者とも ・単数、複数 ・一人称、二人称、三人称 を区別するため、一つの動詞が(現在形で)6つの変化形を持つ事になります。表で見てみましょう。

  単数 複数
一人称 amō amāmus
二人称 amās amātis
三人称 amat amant



  単数 複数
一人称 chitayu chitayem
二人称 chitayesh' chitayetye
三人称 chitayet chitayut



ロシア語では基本的に行為者(私が、彼が、あなたが)を書きますがそれが無くても動詞の形から判別できますし、 ラテン語は基本的にこの動詞の人称変化のみで行為者を表します。
例:
Vidēs. あなたには見えている。
Videō. 私には見えている。

一語で文が完結してしまうのがラテン語の面白いところですね。この特徴は今でもラテン語のフレーズが様々な場所でモットーとして用いられている 理由の一つであるように思えます。

格変化とその用法

ロシア語もラテン語も名詞の形を変化させる事で格を表します。この『格』はしばしば「日本語の”てにをは”を表すもの」と説明されます。
これを表で見てみましょう。
servus:奴隷

  単数 複数
主格 servus servī
属格 servī servōrum
与格 servō servīs
対格 servum servōs
奪格 servō servīs
呼格 serve servī


これは数種類ある変化パターンの一つで、多くの男性名詞がこの変化をとります。勿論他の変化をとる場合もありますし、女性名詞がこの変化をする場合もあります。
続いてロシア語の変化も見てみましょう。
student:学生

  単数 複数
主格 student studenty
生格 studenta studentov
与格 studentu studentam
対格 studenta studentov
造格 studentom studentami
前置格 studente studentakh



これは男性名詞の変化の一つです。
ロシア語、ラテン語ともにすべての名詞は男性、中性、女性に分けられそれぞれ異なる変化パターンを持ちますが、 ここでは上記の二つについてのみ見てみましょう。
まず、格の分類はどうなっているでしょうか。主格、与格、対格は同じですね。属格と生格、造格と奪格はそれぞれ似た性格を持っています。
実際の使い方から見てみましょう。

・所属を表す格
ラテン語の属格、ロシア語の生格はどちらも所属を表すことができます。

・cibus servōrum :奴隷たちの食べ物

・kniga studenta :学生の本

・前置詞と格
ラテン語の前置詞inとロシア語の前置詞v(na)は後ろに対格を置くことで「~へ」、奪格(前置格)を置くことで「~において」を表します。

・in oppidum(対格)、v gorod: 町へ

・in oppidō(奪格)、v gorode(前置格): 町で

oppidumは中性名詞ですが、ロシア語ラテン語共に中性名詞単数の主格と対格が等しい形を取ることは興味深いです。ロシア語の男性名詞対格は 生物(活動体)の場合生格、無生物(非活動体)の場合主格と等しい形をとります。上の例の場合男性名詞gorod(町)は生物ではないため、主格と等しい形を とっているのがわかります。

・呼格について
上の表を見ると、ラテン語に存在する呼格がロシア語には書かれていませんね。呼格というのは呼びかけの際に使う格です。 ではロシア語に呼格が存在しないのかというと、「ほとんどの名詞は主格が呼びかけに使われる」というのが正確なところです。
辞書を引いてみるとbokh(神)otets(神父)などの語に特別な呼格形が存在している事がわかります。

 

2018.09.22