ミニTale『人類が滅びた日』

お風呂でぼーっとしている時にふと思いついたネタを文字に起こしました。

わざわざTaleとして投稿する内容でもないのでブログに。

 

 

 

 

2032年6月20日、人類の滅亡が確定した。

無差別にワープを繰り返していたチュルプ星人は火星と木星の間にワームホールを開き、偶然出くわした地球を金持ち向けの狩猟地とする事に決めたのだった。

これだけ小さい惑星に70億もの文明種がひしめき合っているのは珍しい。相当息苦しい生活を送っているのではなかろうか。すぐに数を減らしてより伸び伸び暮らせるようにしてやるさ、とチュルプ星人の一人が呟いた。

この星の技術レベルはかなり低く、宇宙への進出はごくごく初期段階のようで、我々へ噛みつく心配はほとんどない。まさに狩場として理想的であった。

まずは下地作りとして、地球上の兵器が無力化された。特に気になったのは異常に大量と言える熱核兵器だ。全て爆発すればこの星が3回は消滅する量だったが、何を目的としてそんな量を保有していたのかチュルプ星人には理解が困難だった。

この程度の兵器は彼らの個人用防護服にとってさえ爆竹程度の破壊力だったが、一発爆発するだけで数万の地球人が死んでしまう。ハンティングツアーの相場が100人殺して6万ケピアなので商売上看過できない量だ。

軌道スキャナーで核兵器の位置を特定してから電磁パルスで起爆装置をキルするだけなので、対処は容易だった。現地語でSCP財団を呼称する組織が非常時に備え種の保存を目的とした脱出船(SCP-2237)を用意していたが、わが船の自動迎撃装置がビームで蒸発させてしまった。植民先までプログラムされていたから放っておけば将来の狩場になったはずだが...。当然火器管制責任者は叱責された。

さて、あと数日でチュルプ星と地球との定期航路が開き、ハンティングツアーの客が押し掛けるはずだ。これから舞い込んでくる莫大な売り上げを思うと頬が緩む・・・

 

 

 

 

 


2032年6月20日、この宇宙の滅亡が確定した。

地球へ特異点的に集中していたあらゆるSCPオブジェクトが解放され、この宇宙は泡がはじけるように消滅した。この星にだけなぜそれだけの異常存在が集まったのかは誰にもわからない。

少なくとも、地球という小さな星がこの宇宙のキーストーンになっている事をチュルプ星人が知らなかったという事だけは確かだ。

 

(終わり)

 

・補足

キーストーン種:生態系において比較的少ない生物量でありながらも、生態系へ大きな影響を与える生物種を指す生態学用語。生態学者のロバート・トリート・ペインによって提唱された概念。

例として

北太平洋岩礁潮間帯のヒトデ (Paine 1966)
当該地域の岩礁には、複数の生物が生息している。フジツボカルフォルニアイガイは、共に同じ固着面を奪い合う同じ生態的地位を占める競争状態にあるが、両者の捕食者であるヒトデが共存している場合は、競争排除は起こらなかった。ヒトデを人為的に排除すると、イガイが岩礁の殆ど面を占有し、他の多くの生物が減少した。このことから、この系ではヒトデがキーストーン捕食者であると考えられる。
北太平洋沿岸のラッコ (Estes et al. 1998)
北太平洋沿岸では、1990年代にラッコの減少に伴い、その餌となっていたウニの個体数が増加した。ウニがジャイアントケルプの仮根を食い荒らしたため、ジャイアントケルプの海中林が破壊され、生物群集に影響が出た。

などが挙げられる。