言語学ノート:概念メタファー

ここ最近院試に向けて言語学の勉強を進めている。自分なりにまとめるためのメモ書きをブログに残しておく。これは学習中のメモであって、多分に誤りが含まれているであろうことはわかったうえで、興味がある人に眺めてもらえればと思う。

 

第一回は『概念メタファー』

”メタファー”と言われて思い浮かぶのは「国家は家族だ。」のような修辞表現であったり、「楽器は男根のメタファー」などという言葉だろう。

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最早懐かしい

 

認知言語学でいう『概念メタファー』というのは具体的に文中で修辞として用いられるものではなく、言語表現のより根本的な、発想に関わる”たとえ”である。

LakoffとJohnsonによる「Metaphors We Live By (邦題『メタファーと人生』)において提唱された概念で、具体例としては

Love is  journey  愛は旅である

Life is  journey 人生は旅である

Argument is war 議論は戦いである

などが挙げられている。具体例を見てみよう。

 人生において、我々は「道を踏み外し」たり、「道を見失ったり」する。英語特有の表現でいえば"He made his way in life.(彼は立身出世した)" 、"She went through life with a good heart.(彼女は陽気に人生を過ごした)"。「ゴールイン」した二人の結婚生活が「暗礁に乗り上げる(船旅)」事もある。

議論中、「さあ、反論があるならしてくれたまえ」は英語で"Shoot me!(俺を撃て!)"と言い、日本語では相手の主張をカタナで「一刀両断」する。敵の主張にある弱点を「狙い撃ち」にする事もある。英語の表現では"He shot down all my arguments.(彼は私の論点を全て撃ち落とした。)"、"They defended their position foreciously.(彼らは自身の立場を死守(防衛)した)"

これらの比喩表現はそのベースになる概念メタファーが、二つの事物に類似性を見出す事から生まれている。

人生と旅には始点と終点(スタートとゴール)があり、方向を選択しながら進み、道を通り過ぎる。その過程で人と出会ったり別れたりして、生涯の伴侶と手を取り歩き続ける人もいる。

議論と戦争ではいくつかの立場に分かれ、敵の攻撃を予測して対策を整え、勝者と敗者が決するまで自身の陣地を守り抜こうとする。

このように、異なる表現に共通点を見出し言語を運用する仕組みとして『イメージスキーマ』と呼ばれる概念がある。これは概念メタファーよりさらに深い部分に根差すもので、次回のテーマとしてまとめるつもりだ。

 

参考文献

認知言語学入門』:F.ウンゲラー、H.J.シュミット

認知言語学のための14章』:J.テイラー

 

 

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